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執筆者の写真merumo

「木の文化」はまだ生きているvol.7

「2-2在来工法とは何なのか?」no.1

「生かされていない伝統建築理論」

 

現在の木造住宅の多くは在来工法と呼ばれ、それら構造材はプレカット工場にて加工され、加工済の構造材はまとめて現場に直接送られるのが一般的になりつつあります。

木質系のツーバイフォー工法も今では「木造住宅」という仕分けの中に含められているようですが、これは独自の壁組工法理論の下で同じくプレカット生産がなされています。この工法は外来のものですが、それなりのきちんとした理論ときまりがあり構造的な根拠もはっきりしています。日本での耐久性はまだ不明ですが、壁面枠を組み立てていくわかりやすい仕組みになっており、いわゆる面材の剛性を組み合わせる構造的な根拠はしっかりしており、40年ほど前から日本に入って来て今は全国的にも普及しています。

一方、各地で現在進められている「在来工法」といわれる構造材の組み方、建て方と継ぎ手のプレカット加工は、本当なら日本の伝統構法の考え方から引き継がれているべきものですが、残念ながら厳密にはとても「伝統的な木軸理論」に則ってできているとは云えません。何故なら今の在来工法は「木材本来の持っている強さ」を十分引き出せていないからです。そして木組み全体からみて、間取りと構造体が一体となった安定した「つくり」になっていない事も挙げられます。

「在来」と云う言葉は誰が名付けてどこから来たのかはわかりませんが、結局「木軸理論を学ばず、ただ形だけ真似てみた」というのが現状です。

現在の木造建築と呼ばれるものを分類すると下記のような種類がありますが、軸組構法というのは、厳密には「伝統構法」と「在来工法」にさらに分けておく必要があります


今の在来工法を強いて表現するなら、全体的に継ぎ手部分の多くは金物の力に依存しているのでむしろ「金物工法」というのが適当なのかもしれません。

50年前の高度成長期、分譲住宅建築のラッシュと共に建て方の省力化と大工不足が叫ばれ始めました。同時に金物加工が発達してきたために、継ぎ手加工にかかる手間を省くため量産できる金物で木材を接合しようという試みが盛んになされたようです。

皮肉にも、これら新たな金物の開発に協力したのも多くは当時の大工達です。

金物は伝統木造でも古来より使われていましたが、その当時は手作りの鉄ですから、継

ぎ手の抜け止め等、あくまで補助的な役割としての存在でした。

しかしながら、現代は精度以上にスピードが求められる時代になり、量産品となった建築金物は木部材の緊結材として、一気に普及しました。

金属加工はミリ単位で精度が出るのに、木材はあとで変形、反りなど暴れる癖があるので、両者の精度バランスを取るため、後年、プレカットの台頭時から梁などの構造部材も天然木に代わって変形の少ない積層集成材を使う流れになっていったようです。

時代の流れとしては仕方がなかったのでしょうが、ここで重要なことは、木造建築そのものが本来、「木の持つ強さを利用する構法」であったものが、いつのまにか「金物の強さに頼る工法」に軸足がぶれていったことなのです。

こうして、本来あくまで木材の継ぎ手の補助的な役割であった金物が、現代建築ではすっかり主役に躍り出てしまいました。

それが現在の在来工法は「金物工法」と称する所以です。そして今は誰もそれに対して疑問すら抱きません。

そもそも伝統軸組の木組みとはどういった構造理論の上に成り立っていたかの本格的検証が未だに十分されていないということでしょう。

現代の建築基準法がどのような経緯で出来てきたかはわかりませんが、本来の伝統木軸の理論を解析して体系化しようとするのではなく、戦後、一斉に普及した鋼構造的な考えが全面的に支持され、それに沿った力学理論の考え方が優先してきた結果、木造建築の基本的な考え方も制度化され、この半世紀、木造軸組みに関する検証が結局議論もされず放置されているような気がします。今、建てられている木造建築の工法では、次世代を超え、何世紀も超えた未来にも残せるものが登場するとはとても思えません。


 

「木の文化」は、まだ生きているvol.7

2.伝統建築の理論と在来工法の実態

2-2在来工法とは何なのか?no.1

「生かされていない伝統建築理論」

文筆 和のトラスと伝統を学ぶ会 副代表 飴村雄輔

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