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執筆者の写真merumo

「木の文化」は、まだ生きているvol.5

2-1伝統的木造軸組み構法の考え方とその理論 no.2

第二に、柱、桁、胴差、梁等の構造材の間隔や配置に無理が無いように設計されていることです。木材は柔らかい弾性物体です。胴差、桁、梁などの横架部材に対しても、たわみや変形が起こらないように、適切なスパンでそれらを支える柱を配置し、さらに梁の横揺れを抑えるつなぎ梁を適切に配置します。また柱もたわみや座屈が起こらない程度に太さを決め、その太さに合わせて高さ方向にも適切な位置に柱間につなぎ材が配置されています。標準的な柱で建っている伝統木造の建築物には高さ2m以内には必ず柱間を繋ぐ横材や小壁が入っています。欄間も含め長押や鴨居も、そういう意味での構造用つなぎ材のひとつなのです。  







それと伝統工法では現代建築工法のような柱間に筋交部材は用いません。柱と桁の継ぎ手が少々甘くてもそこに筋交斜材を入れるとその柱間の揺れは確かに収まりますが、外圧を受けた時、その力は垂直と水平方向に分散せずに、直近の筋交斜材を利用して力が流れやすくなり、その斜材を受ける土台や桁の接合部材に負荷が集中します。結果、建物全体としてのバランスを崩す要因になると捉えたようです。 

復元力という力を重視した場合、この考えは理に適っています。そのため柱間の壁部分には斜材の代わりに水平の貫材を多用していました。この貫材は楔を併用すると大きく揺れても柱の変形を抑制する力をかなり発揮します。貫構法は免振構造としての性能はかなり高く、京都の清水寺の舞台などはその代表的なつくりになっています。


筋交を入れる事で、現代でいうところの「耐力壁」として剛性面を実現するという考えは全く無く、全体的な力のバランスを重視した伝統構法では、むしろ斜材は力の流れを崩す余計な存在として考えられていたようです。



また、外圧の力ができるだけ各部材に均等に吸収されるようにつなぎ梁のような横架材が適切に配置され、胴差や桁が外側に膨らまないように常に内側に部材を絞り込むようにつなぎ梁の配置が工夫されているのです。


梁というのは上からの荷重を支えるだけのものではなく、本来の目的は建物全体の膨らみを防ぐ絞り込みが第一義だったのです。




 

「木の文化」は、まだ生きているvol.4

2.伝統建築の理論と在来工法の実態

2-1伝統的木造軸組み構法の考え方とその理論 no.2

文筆 和のトラスと伝統を学ぶ会 副代表 飴村雄輔



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